自作短編小説『奥さんの眠れぬ夜』 [自作小説]
前回、案外まじめな短編小説?を載せましたが、今回は「やや下ネタ」小説を載せます。
わたしの中で勝手に分類されているんですが、これから載せるものは「奥様シリーズ」または「団地妻シリーズ」と呼んでいます。
題名 『奥さんの眠れぬ夜』
奥さんは男と喫茶店の中で、奇麗に磨かれたプラスチックのテーブルを間に挟み、向かい合っていた。
男はポケットに入れていたせいで、くしゃくしゃになった煙草を口にくわえ火を付けた。一口、煙を吸い、まだ煙を吐き終えないまま、奥さんにしゃべりかけた。
「奥さん、こんな話、知ってますか?」
奥さんは瞳を輝かせ、テーブルの上に手を乗せ、身を乗り出すように聞いた。
「どんな話? ねぇ、聞かせて欲しいわ」
その奥さんの瞳を見て、男はゆっくりと煙草の煙を吐き、そしてゆっくりと語り出した。
その話の内容は、とあるサラリーマンがアメリカへ転勤した話で、少年の幽霊にとりつかれ、最後にはノイローゼになって死んでしまうものであった。
話を聞き終えて、奥さんは両手で自分の肩を抱くように震えた。
「恐い話だわ」
「いや、この話にはね、まだ続きがあるんですよ、奥さん」
男は意地悪そうに言った。
「ここまで聞いたら、最後まで聞きたいわ。聞かせてちょうだい」
「続き、というか、この話にはオマケがついていてね。この話を聞いたら・・・」
男はここまで話すと、とたんに口を止めた。
喫茶店の中に奥さんの旦那さんが入ってきたからだ。
旦那さんは奥さんと男の姿を見つけると、飛ぶようにやってきた。
「おい、こんなところで何をやっているんだ」
「あら、あなた。一緒に恐い話を聞きません? 身の毛もよだつわよ」
奥さんは、そう言って今まで聞いた話を教えた。
旦那さんはそれを聞きながら身震いをしていた。
「で、この話を聞いたら、どうなるんだい?」
今度は旦那さんまでもが、男に聞いてきた。
男はゆっくりと、勿体ぶるように口を開いた。
「実はですねぇ・・・。この話を聞いたら、この話に出ていた少年の幽霊が、聞いた人に取り憑くんですよ。夜になると、寝室に現れるんです。それがいつまでも続いて・・・」
「わかった、もういい」
男の話を旦那さんが途中で止めた。
「おい、そろそろ帰るぞ」
旦那さんは奥さんの手を引き、家へと帰った。
その日の夜。
ふかふかのダブルベッドで奥さんと旦那さんは横になっていた。
「ねぇ、あなた。恐いわ・・・」
奥さんは旦那さんの腕にしがみついた。
「大丈夫だ。おれがついている。そんなに恐いのなら、寝室の外で見張ってようか?」
「ええ、お願いするわ」
旦那さんはバットを片手に寝室を出た。
そして、奥さんはゆっくりと眠りにつこうとした。寝室の窓が音もなく開き、なま暖かい風が部屋を吹き抜けた。奥さんは恐怖のあまり、声を出せなかった。
あの話の中で出てきた少年の幽霊だ・・・。奥さんはそう思った。重いものが体の上を這っているよう感じた。
これは金縛り・・・?
そう思って目をそうっと開くと、そこには奥さんの体にまたがった男の姿があった・・・。
<了>
・・・くだらない。
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