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自作短編小説『奥さんの暑い夜』 [自作小説]

うーん、前回の下ネタ短編小説は、くだらなかったですねぇ。
今回載せるのは、以前、米米クラブが「LIVE UFO」(だったかな?)でライブをやっていたんですが、この中でカールスモーキー石井が「奥さんのキノコ取り 最終回」という一人芝居をやっていました。これが最高に笑えたんですよ。本当に彼は天才ですね。
で、その「奥さんのキノコ取り」の設定を少しばかり(不倫という関係と、「今夜は大丈夫」の合図くらい)拝借したものです。この作品では、恥部や陰部をすべて比喩的表現に変えています。その方が、想像力がかき立てられて、より興奮しますか?

題名 『奥さんの暑い夜』

【禁断の愛の序曲(プレリュード)】
 その不倫は5年も続いていた。この不倫は、その辺の人たちが楽しんでいるような不倫とは、少し違っていた。なんと、二人の家は「お隣りさん」だったのである。
 奥さんの家族が、男の家の隣りへ引っ越して来たのは、5年ほど前の春だった。
 
 家の庭で、ゴルフスイングの練習をしていた男は、隣りの空き家の前に、大きなトラックが停車しているのに気づいた。
 「あれ? 引っ越しかな」
 男は日頃から、体力を持て余していたので、引っ越しの手伝いへ顔を出した。
 「こちらに引っ越して来られるんですか?」
 男は旦那さまと思われる男性に声をかけた。
 「ええ、今度から隣りに住むことになります」
 声をかけられた旦那さまは、笑顔で快く答えた。
 旦那さまの体の影から顔だけを覗かせるように、女の子が男の顔をジロジロと見ていた。旦那さまが、女の子に挨拶をするように言うと、恥ずかしいのか、新居となる家へ入っていってしまった。
 「すみません。教育が行き届いていないもので……」
 と、奥さんが、軽い荷物を運びながら言った。
 「いえ、気にしないで下さい。それより、引っ越しを手伝わせて下さい。体力が有り余っちゃって」
 男は笑みを浮かべながら言った。
 こうして男は、やり場がなく、溜まる一方だった体力の使い道を見つけることができたのである。
 そして、荷物運びのメインイベント。おそらく先ほどの女の子のものと思われるグランドピアノの搬入である。
 旦那さまが後ろ向きになりピアノを引っ張り上げ、奥さんと男がピアノを後ろから押すようにして、家の中へ運ぶことになった。ピアノを運んでいる最中、男は奥さんの手を上から包み込むようにしてピアノを押していた。
 「あ……」
 奥さんの唇から、甘く色っぽい声が小さくこぼれた。
 幸いにも旦那さまはピアノを運ぶのに夢中で、耳に入っていないらしい。奥さんは男を睨みつけた。しかし、男はひるまずに、奥さんの手の上から自分の手を覆いかぶせ、優しく揉み続けた。奥さんの厳しい表情が、次第に変化し始めた。
 目を潤ませながら、男の目を見つめ、口からは甘い吐息が音を殺すように漏れていた。 ピアノを運び終え、旦那さまは奥さんの顔がやけに熱っぽいのに気づいた。
 「おい、どうした? そんなに赤い顔をして」
 奥さんは、頭の中で的確な答えを探しながら、ゆっくりと答えた。
 「ピアノが、あまりにも重かったから……」
 引っ越しが終わり、男が家から出ようとしたところ、旦那さまと奥さんが二人でお礼を言った。
 「どうも有り難うございました。大変助かりました。今後とも、宜しくお願いします」 男は笑顔で礼をして、玄関を出た。そして、家の門をくぐろうとしたところで、奥さんが男のあとを追いかけてきた。奥さんは男の前で立ち止まり、息を整えてから、白いハンカチを男に手渡した。
 「え? ハンカチ……」
 男がハンカチを手にした途端に、奥さんは足早に自分の家へと戻っていった。男がハンカチを広げると、そこには真っ赤な口紅で奥さんからのメッセージが書かれていた。
 「今夜、私を抱いて」
 奥さんと男の「禁断の愛」が、ここから始まったのである。
 
 二人の間には秘密の連絡方法があった。朝、奥さんの家の郵便ポストの上に、ヤクルトが置いてあると、「今夜は大丈夫」という合図だった。
 最近、自分の妻とも「ごぶさた」だった男は、心をウキウキさせてポストを見に行ったが、まだポストの上にヤクルトは置かれていなかった。次の日、見に行っても置いていない。
 二人は並々ならぬ障害の壁を今までに乗り越え、5年という長い歳月をかけて「禁断の愛」を育んできた。しかし、いくら5年間も続けてきた「禁断の愛」でも、長い間、連絡が不通だと、不安になるものである。
 もはや男の心の中には「奥さんを抱きたい」という、人に心の中が知れると、とても恥ずかしいような強い欲望しか存在していなかった。男は、はやく奥さんと愛し合いたいあまり、奥さんの家へ電話をかけてしまった。
 男の期待に反して、電話に出たのは旦那さまの方だった。
 「はい、もしもし……」
 突然、旦那さまの声が耳に入ってきたので、男は思いっきり動揺した。そして、とんでもないことを口走ってしまったのである。
 「あっ、あの。奥さんと不倫させて頂いている者ですが……」
 二人の関係は、急展開でその様相を変えて行くのであった。

【真夜中の狂詩曲(ラプソディ)】
 男が間違って、旦那さまへ電話してしまった次の日、会社で仕事をしている男のもとへ奥さんから電話が入った。
 「今夜、いつものところで会いましょう」
 そう告げると、奥さんは他には何も言わずに、受話器を置いた。やっと奥さんと愛し合える! 男の頭の中は、そのことでいっぱいだった。あんなことや、こんなこと、あの手、この手で奥さんを攻めてやろうと考えていた。男は、普段よりも仕事をはやく片づけ、奥さんとの待ち合わせ場所へと急いだ。
 「いつものところ」とは、海の見下ろせるホテルのバーだった。店内の照明は薄暗くしてあり、海が見下ろせる窓を少し明るめの照明が照らし出していた。
 男は、少し来るのが早すぎたかな、と思いつつ、窓から一番海が綺麗に見える席に腰をおろした。バーテンにジャック・ダニエルのロックを注文し、背広の内ポケットから煙草を取り出して、火をつけた。
 男はしばらくの間、月に照らされている静かな海を眺めていた。バーテンがコップを男の前に置くのと同時に、奥さんが店内に入ってきた。
 背中の中程まで伸びている髪の毛が潮風のせいか、少し乱れていた。化粧といえるものは唯一、真っ赤な口紅だけだった。どんな化粧品を使っても、奥さんの透けるような、そして、思わず指で撫でたくなるような白い肌を作り出すことは出来ないだろう。
 奥さんは、赤いハイヒールをコツコツと鳴らしながら、男が待つテーブルへと歩いていった。
 「待たせたかしら?」
 男はゆっくり立ち上がり、向かいの奥さんが座る椅子をそうっと引いて言った。
 「いえ、ついさっき来たばかりですから……」
 男はさっそく、料理の注文を頼んだ。先ほどのバーテンが、少し腰を折り、会釈しながら「他に、ご注文はございませんか?」と聞き、男と奥さんの顔を見つめた。
 男は、奥さんの目を見て、ウィンクしながら言った。
 「それから、部屋をひとつ」
 男と奥さんは、美味しい料理をたらふく食べた後、そのまま用意された部屋へと直行したのであった。
 部屋には、部屋主用と来客用の二つのバス・ルームが用意されていた。奥さんが部屋主用の、男が来客用のバス・ルームを使用した。
 二人は、白いバスローブだけを身にまとい、部屋の真ん中で見つめ合っていた。静寂が二人を部屋ごと包み込んでいるようだった。窓の外から、波の打ち寄せる音だけが、かすかに聞こえていた。
 奥さんは無言のまま、ベッドの上に座り、恥ずかしそうに目をつむり、顔をそらしたままで、男を挑発するようにバスローブの裾をゆっくり上へまくっていった。バスローブが腰の辺りまでまくり上げられた時、男の目に文字が飛び込んできた。
 「come in!!」
 奥さんの白く柔らかそうな太股には黒いマジックで、こう書かれていた。そして、その文字から矢印が引かれていた。矢印の先には、黒く生い茂った森林があった。黒いジャングルの中から、うっすらと白く透き通った湖が顔を出し、今にも湖水が溢れんばかりに、ベッドの枕元の照明に照らされていた。
 
【ベッドの中の交響曲(シンフォニー)】
 男はゆっくりと、奥さんの待つベッドへと歩み寄った。そして、吸い付くように奥さんの体に寄り添い、右手を奥さんの頭の下に置き、左手で奥さんの体をバスローブの上から、優しく撫でまわした。
 「ん……」
 男が、そうっと奥さんの耳に息を吹きかけると、奥さんは小さく喘いだ。男の左手は、まるで別の生物のように、奥さんの体の上を這いまわった。その動きに合わせるように、奥さんの小さな喘ぎ声。それはまるで、男が左手を使い「女体」という楽器を演奏しているようだった。
 男は左手を巧みに操り、バスローブを少しずつ胸元からはだけさせ、白い肌の上を滑るように移動し、双子の雪山へとたどり着かせた。左手の手の平だけを白い山肌に密着させ、山頂を目指してゆっくりと登らせた。
 左手が山頂にたどり着くと、男は手相の溝で雪山の山頂にそびえ立つ、薄桃色の塔を優しく刺激した。
 「うぅん……」
 肌が敏感なのか、それとも乳首が性感帯なのか、奥さんは今まで以上に大きな喘ぎ声を上げ、腰を少しだけ浮かした。
 男の左手は、その微妙な腰の動きを見逃さなかった。薄桃色の塔の刺激を止めて、ゆっくりと雪山を下山し始めた。そして、広い雪野原を通り過ぎ、小高い丘を登った。丘からは、黒く生い茂った森林が見下ろせた。
 男は、奥さんの頭の支えをしていた右手の代わりに、枕をそっと頭の下へ入れて、右手と左手を奥さんの体の上で合流させた。久々に自由になった右手は、弾むように雪山を左右交互に駆け回った。左手は、ゆっくりと小高い丘から、黒いジャングルの中へ入っていった。
 そして、左手は五本の指を器用に使い、黒い樹木をかき分けて、白く透き通った湖へとたどり着いた。この湖は、言うなれば「女体の最終地点」、または「秘密の花園」といったところだ。
 右手で薄桃色の塔をつまんだり転がしたりしながら、左手で湖を包んでいる貝殻の縁をゆっくりとなぞった。
 「あふぅ……」
 廊下にまで響いたのではないか、と思わせるほど大きな喘ぎ声だった。

【オルガスムスへの行進曲(マーチ)】
 奥さんの頬は赤く染まり、その赤い色は耳たぶにまで及んでいた。目は潤み、鼻からは荒い息づかいの音が漏れている。
 奥さんの真っ赤な唇から、はじめて喘ぎ声以外の声が発せられた。
 「おっ、おねがい……。じらさないでぇ」
 しかし、女体を演奏するのに夢中になっている男の耳には、この奥さんの喘ぎ混じりの訴えは届いていなかった。
 男の右手は素早く黒いジャングルへと移動し、湖の畔に位置する、肌色の真珠をいじり回した。
 「あああぁ──!!」
 奥さんの腰がピクピクと痙攣を起こした。なんと奥さんは、男の指技だけでイッてしまったのである。
 「ふぅ、……イッちゃったぁ」
 奥さんはボソリと呟いた。その言葉を聞いたからか、男の手の動きは止まった。奥さんは体中が麻痺して、力が入らない感じがした。
 このまま余韻に浸っていたい。奥さんは、そう思った。
 しかし、そんな奥さんの気持ちに反して、男の手は再び動き始めた。しかも、今度は先ほどよりも、奥さんが感じるポイントを激しくついているように思える。
 「何回でも、イカせてやるぅ!」
 まだ、オルガスムスの余韻が残っている奥さんの頭の中に、男の言葉が響きわたった。男はゆっくりと立ち上がり、バスローブを脱ぎすてた。男の男性自身は、波打つ血液の流れが感じられるほど大きくなっていた。男性自身は奥さんの目の前で、薄暗い照明に照らされ、暗闇の中で怪しく浮かび上がっていた。今まで、何人の女性を貫いただろう、と思わせるほど太く、男のへそにつきそうなくらいそそり立っていた。
 奥さんは、その男性自身を見ただけで、溜息を漏らした。あんな太いの、入るかしら。奥さんの脳裏には、自分の性器があの「暴れん棒将軍」に壊されるのではないか、という恐ろしいけれども、興奮してしまいそうな想像が浮かび上がった。
 「奥さん、自分ばかり楽しまないで、僕のもかわいがって下さい」
 男はそう言うと、奥さんの顔の前に男性自身を差し出した。奥さんは思わず、生唾を飲んだ。これを口でくわえるの? と、目が見開かれた。
 こんな大きなものはくわえられない、と思いつつも奥さんの両手は男の男性自身を握りしめていた。奥さんは、そうっと男性自身を自分の口の中へと運んだ。そして、唇で男性自身を締め付け、舌の先で「暴れん棒将軍」の頭を舐めながら、口の中でピストン運動をさせた。
 入っているのは上の口なのに、奥さんの下の口は少しずつ濡れ始めた。上の口でも感じることができるの思いながら、奥さんはピストン運動を早めていった。男性自身を口から出し、笛を吹くような格好で「暴れん棒将軍」をくわえた。
 男は奥さんの頭をおさえながら、大きく息を吐いた。私の舌技で感じているのね。奥さんは、優越感に浸っていた。さっきは指だけでイカされたから、今度はこっちが舌だけでイカせてあげる。奥さんは男の顔を上目遣いで見つめた。
 途端に、男は奥さんの口から、男性自身を抜き取った。
 「あら、もう止めちゃうの?」
 奥さんは少し悔しそうな顔をして言った。せっかく舌だけで白い花火を打ち上げようと思っていたのに。奥さんは口を尖らせた。
 「上の口ばかりじゃ、下の口がさみしいだろ」
 男はこう言うと、奥さんの黒く生い茂ったジャングルに顔を埋めた。白い湖を包み込む貝殻の縁を舌でなぞったり、肌色の真珠を舌で転がしたりした。
 「はうぅん……」
 奥さんは男の顔に自分の娘を押しつけ、腰を激しく動かした。

【精子への鎮魂歌(レクイエム)】
 「ちょうだい。あなたのを私の中へ……」
 奥さんは恥ずかしながらも、自分から男性自身を欲しがった。男も我慢の限界だったのか、奥さんの両足を大きく開かせた。そして、「秘密の花園」の中へ男性自身をゆっくりと入れていった。
 男は男性自身から、湖の中の柔らかさや暖かさを感じた。貝殻の縁が、「暴れん棒将軍」に吸い付いて、波打つようだった。「暴れん棒将軍」は、奥さんの体の中で暴れまわっていた。湖の中を潜り、湖底に横穴の洞窟を発見し、その中へ頭を突っ込んだ。
 「あああぅん……」
 奥さんの毛と男の毛が、絡み合うようにチークダンスを踊っていた。男は腰を激しく、奥さんの湖に打ちつけた。奥さんも腰を激しく振り、「暴れん棒将軍」を湖の中へと押し込んだ。
 「イキますよ」
 男の腰の振りが次第にはやくなっていく。チークダンスを踊っていた、奥さんと男の毛も激しく踊りだした。奥さんは絶頂の声を上げた。
 「暴れん棒将軍」の頭の先から、白い花火が打ち上がった。白い花火は、白い雪野原に落ちて、消えた。奥さんは自分のお腹に落ちた白い花火を手にとって、お腹一面に塗り広げた。
 「種を植えることなく、花火は散った……」
 男はポツリと呟き、奥さんの体を再び抱き寄せた。

 二人はひとつのベッドで同じ夢を見たあと、そのまま余韻を楽しんでいた。男の肩を奥さんの頭が枕代わりに使って、男は奥さんの髪をそうっと撫でていた。
 男は唇を奥さんの唇に押し当て、舌を入れた。奥さんも、それに答えるように、激しく舌を動かし、絡め合わせた。部屋の中に、唾液が鳴る音が小さく響いた。
 男は右手で奥さんの髪の毛をかき上げ、うなじにそっと口づけをした。
 「あ……」
 奥さんの体は、小さくのけ反った。まだ余韻が残っているにもかかわらず、男の攻撃に感じてしまう。自分は何て淫らな女なの。奥さんは、自分で自分を蔑むことで、なお一層の興奮を得ていた。
 「そこまでだ!」
 絡み合っていた二人は、突然の来訪者の声に、顔をドアの方へ向けた。そこに立っていたのは、旦那さまだった。
「おまえたち、何をやっているんだ!」
 旦那さまは肩で息をしながら、ベッドで寄り添ったままの格好でいる二人の方へ歩み寄っていった。部屋の中に重たい雰囲気が漂った。
 「何をしていたんだ? 答えろ!」
 
【旦那さまの譚詩曲(バラード)】
 旦那さまは怒鳴りながら、二人を包んでいたシーツをめくり上げた。シーツの中の二人は、もちろん裸のままであった。
 「あんた、説明して上げてよ」
 奥さんは男の背中を押して、言った。男はよろけながらも言い返した。
 「いや、奥さんが先ですよ。いつも先にイッているじゃないですかぁ」
 「なっ、何てことを言うの。あなたが先のときもあったは!」
 「それは、十回に一回くらいの割合ですよ」
 二人のやり取りを聞いていて、旦那さまの額には、血管が浮かび上がってきた。目は血走り、今にも暴れ出しそうだった。男は、旦那さまと奥さんの顔を交互に見て、状況を完全に把握できていなかった。
 奥さんは裸のまま旦那さまの前に立った。
 「だって、あなたったら、月に何度も私のことを愛してくれないじゃないの!」
 「なにぃ! 月に二回じゃ、欲求不満がたまるとでも言うのか!」
 「ええ、そうよ。私は淫らな女なの。週に一回でも足りないくらいだわ」
 しばらくの間、奥さんと旦那さまの口論が続いた。男はただ、ベッドの中で聞いていることしか出来なかった。そんな男の様子を見て、奥さんは言った。
 「あんたも黙っていないで、何か言ったらどうなの!」
 「いやっ、あのぅ……」
 男はシーツで下半身を隠しながら、モジモジしていた。
 「自分は、テクニックでは旦那さまより上だと思っています」
 「そんなこと、誰も聞いていないわよ!」
 奥さんが目くじら立てて怒鳴った。旦那さまは、そうっと奥さんに寄り添った。
 「お前が望むのであれば、週に二回だろうが、三回だろうが、毎日でもやってやるよ」 その言葉を聞いて、奥さんの目が輝いた。
 「あら、本当?」
 急に甘い声を出しながら、奥さんは旦那さまの体に寄りかかった。そして、さっきの男との口づけよりも激しく、口づけを交わした。男は指をくわえて見ていた。
 「でも、ぼくの方が奥さんを何回でもイカせることが出来ますよ」
 男がボソリと呟くと、奥さんは男の方へ歩み寄ってきた。
 「そうよねぇ、男は技よね。うふふ」
 奥さんは目を潤ませながら男の目を見つめ、男の首に両手をかけながら言った。
 「ねぇ、私はあなたのことを、生死を賭けて愛していたわ。その証拠に今ここで死んでみせてもよくってよ」
 いきなりな発言に、男は動揺した。
 「ぼ、ぼくだって、奥さんに精子をかけて愛していましたよ」
 「ちょっと待て! おまえたち、俺を忘れていないか」
 旦那さまは二人に近づいた。そして、奥さんの手をつかんで聞いた。
 「なぁ、俺との結婚はウソだったのか? 答えてくれ」
 奥さんは汚い物を見るような視線で、旦那さまを見た。
 「俺はずっと、お前だけを愛してきた。俺のすべての性欲を他の女性へ向けることなく、お前だけに注いでいた。そしてすべてをお前に捧げてきた。それの何処が不満なんだ!」

【三人の輪舞曲(ロンド)】
 男は急に名案が浮かんだ。
 「そうだ! こうすれば、いいんですよ」
 男の声に反応して、旦那さまと奥さんは男の顔を見た。
 「今から三人で、愛し合えばいいじゃないですか」
 男の提案に、夫婦の目が輝いた。そして、ベッドに近づきながら言った。
 「そうよね。今まで男女一人ずつという固定概念に縛られていたから飽きていたんだわ。違う設定で楽しめばいいのよね。それもみんなで」
 奥さんは今まで以上に、目をいきいきとさせて男の体に絡みついた。
 「ナイスアイディアだ! 3Pなんて燃えちゃうなぁ」
 旦那さまは服を脱ぎながらベッドの中へと入っていった。そして、奥さんの体を舌で舐め回した。窓から月の光が射し、ベッドの中で絡み合う三人を優しく照らしていた。三人は先ほどしていた口論の激しさなど忘れ、男と女のプロレスを楽しんでいた。
 しかし、いくら「お隣りさん」でも、「他人」には違いない。男と旦那さまのケンカがベッドの中で繰り広げられた。
 「俺が先に挿入するんだよ!」
 「なっ、何を言っているんですか。旦那さまは上の口、ぼくが下の口です!」
 しかし、そんなケンカも奥さんが二人の「暴れん棒将軍」を口にくわえると、すぐにおさまってしまった。しばらく、口にくわえていた奥さんは、男性自身を口から出して言った。
 「下には二つ、入れる場所があるでしょ」
 そう言うと、奥さんは四つん這いになって、お尻を二人の方へ向けた。旦那さまと男は目の色をかえて、奥さんのお尻に飛びついた。旦那さまは深く透き通る湖の方へ、男は深い谷の間に咲いている菊の花の真ん中へ、「暴れん棒将軍」の頭を沈めていった。
 「あうぅん……」
 奥さんが喘いだ。それは旦那さまも男も今までに聞いたことのない喘ぎ声だった。初めて聞く、激しい妻の喘ぎ声に旦那さまはいつになく興奮し、ピストン運動をはやめていった。その振動は、菊の花の中で遊んでいた男の男性自身にも伝わってくるほどの激しさだった。
 三人とも同時に、最後の声をあげ、重なるようにベッドの中に体を沈めた。
 「……ふぅ、クセになりそう」
 奥さんは、喘ぎ混じりの声で呟いた。奥さんの熱い夜は、まだまだ明けることがなさそうである。

<了>


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